'09/11/10 ゴミ箱から拾ってきた映画、ジャン=リュック・ゴダール監督『ウイークエンド』(仏伊67年)Week End
暇にまかせて、何本かジャンル映画を見たのだが、あまり感心しなかった。少しは語るべきことはあるだろうが、それよりも、本当に面白い映画を見たいと思い、以前から気になっていたこの映画を見てみることにした。
個人的には、ゴダールの映画はそれほど見ていない。最初は、『気狂いピエロ』『彼女について私が知っている二、三の事柄』の二本立てを映画館で見て、どちらも大変気に入った。その後『勝手にしやがれ』をテレビで見てこれも良かったが、『軽蔑』『アルファヴィル』、近年の作品数本も見ているはずだが、思い出せないぐらいで、私は熱心なゴダールファンではない。とはいえ、放送された映画は大抵録画しているはずなので、見直そうと思えば、いつでも見直せる。
『ウイークエンド』は、ミレーユ・ダルク、ジャン・ヤンヌ主演で、まだ劇映画の体裁を保っている作品である。ゴダールのフィルモグラフィ等を調べると、一時期、彼は「商業映画」から決別し、政治的主張主体の作品を作っていたらしい。『ウイークエンド』の中にも、政治的な部分が散見されるが、これは現代の日本人からみて、極めてわかりにくい部分だろう。
この映画の大筋は、お互い不倫をしていて、親の遺産を期待しているらしい若い夫婦が、いつものように週末、車で田舎の実家にご機嫌伺いに向かうが、道中散々酷い目に会う、といったもので、ストーリーらしいストーリーはないといってよい。だからといってつまらないわけでもなく、これが何とも面白いのである。
(余談ながら、ミレーユ・ダルクと言えば、アラン・ドロンと共演した『愛人関係』が日曜洋画劇場で放送されたとき、解説の淀川長治氏は、研ナオコ似の女優と紹介していたが、確かにそんな顔である)
前半で目立つのは、自動車の描き方で、バルコニーから車同士がぶつかって殴り合いになる光景を眺め、出掛けようとして他人の車にぶつけて銃をぶっ放されるは、大渋滞に巻き込まれると、ひっくり返っている車やら、燃えている車やら、道路には死体が横たわっている(これを夫婦の車の進行に合わせて長々とパンして映していく)やら、田舎町でトラクターとスポーツカーが衝突事故を起こして階級闘争議論になるわ、そこかしこに車がひっくり返っているわ、燃えているわ、戦場さながらである。このような自動車の否定的な描き方が徹底しているところが面白いし、共感する。
私は、車自体は大好きだが、車社会には否定的である。わが国の連休における高速道路の渋滞ほど馬鹿げたものはないと考えている。それはさておき、「交通戦争」という語があるように、日常的に、あちらこちらで「闘争」があり、個人個人の攻撃性がぶつかり合う様が、延々と描かれる。「ドラマ」というより、まさしく、一種の「アクション」と言えるだろう。
それから、事故を起こして、車を失った二人は、歩いて実家を目指す。色々なエピソードがあり、ヒッチハイクしたりして、何とかたどり着くが、その後、映画は、田舎暮らしと革命がごた混ぜになったような「革命ごっこ」の様相を呈して終わる。
途中、こんな映画に出てしまって、とか、映画なのか現実なのか、とか、映画の虚構性を露わにする演出もあり、どんな撃ち合い、殺しあいがあっても、劇中リアルタイムで起こっている現実ではなく、絵空事として映る。
映像の間に何回も挟まれ、全体を細かく分けているような字幕も、そういった感じを強める。
一度見ただけではわかりにくい映画ではあるが、最近は便利なもので、デジタル録画なら、早送りも巻き戻しも自由自在、何度でも見直せるわけで、そのように、行ったり来たり、何度も見直しても楽しめる映画である。
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似たような邦題の映画がいくつかあるので、以下にいくつかあげて見るが、ゴダールの映画の題は「イ」が小さい「ィ」ではなく、『ウィークエンド』は別の映画である。
ウィークエンド(加76年)Death Weekend ウィリアム・フリュエ監督、ブレンダ・ヴァカロ、ドン・ストラウド主演のサスペンス、田舎の別荘でのんびりしようとしていたら暴漢グループに襲われるが、報復に一人一人殺していくといくという暴力描写に溢れた映画、国内ビデオ化。昔、テレビで見て、強烈な印象があったので、ビデオを入手。
新・ウィークエンド(加78年)Rituals 上の映画とは無関係、ハル・ホルブルック主演のサスペンス。昔、テレビで見たような気もするが、不明。ちょっと見てみたい。
ダーティウィークエンド(伊73年)Mordi e fuggi / Dirty Weekend ディーノ・リージ監督、マルチェロ・マストロヤンニ主演のサスペンス調コメディ(コメディ調サスペンス?)。見てみたい。
ダーティ・ウィークエンド(英93年)Dirty Weekend マイクル・ウィナー監督のサスペンス、国内ビデオ化。
濡れたウィークエンド(伊78年)Enigma Rosso アルベルト・ネグリン監督、ファビオ・テスティ、クリテティーネ・カウフマン主演。昔、テレビで見た。内容的には、同じファビオ・テスティ主演の『ソランジェ 残酷なメルヘン』(伊72年、マッシモ・ダラマーノ監督、国内DVD化)に近い、ジャーロものだったと思う。米国でのビデオ題が "Trauma" だったようで、この名前で、映画パックセットのDVDに含まれていたり、単体のDVD-Rでも入手可能であることがわかった。
ウィークエンド・ラブ(英73年)A Touch Of Class メルヴィン・フランク監督、ジョージ・シーガル、グレンダ・ジャクソン主演の不倫恋愛もの。昔、テレビで見たが、コメディ調で、ほろ苦い。音楽が効果的(バーゲンで出ていた中古サントラLPを最近買った)。名作だと思うが、なぜかなかなか国内DVD化されないし、テレビ放映もされない。米国版は簡単に購入できるが、『フレンズ』の例もあるので、手をこまねいている。
他にも、邦画『ウィークエンド・シャッフル』を初め、色々ある。


有名なグロテスクなシーンがいくつかあるが、全体的に、話の広がりの小さい、こじんまりとした映画という印象。
字幕だけのために、何倍もする国内DVDを買うよりも、英語に強くなって、米国製を輸入したほうがずっと得だろう。例えば、表題のこの映画、著作権切れで、米国では、各種パックセットに含まれており、極めて安価に入手できる。国内DVDも販売されているが、これはかなり良心的な価格で、1,000円でお釣りが来るのだが、それでもコストパフォーマンスは悪すぎる。余程この映画が気に入って、どうしても字幕入りで見たい人向けではないだろうか。
余談ながら、...
アーシアの出ている映画は多分いくつか録画してあったと思ったのだが、なにやら、題名に「駅」が入っている映画があるらしい。イタリアの最近の映画で「駅」が出てくるものといったら、確かサスペンスもので、少し見たことがあったな、と思い、、DVD-Rを探して見ると『雨上がりの駅で』というのがあったので、これを再生してみると、確かにアーシアが出ている。しかし、これはまったく別の映画だった。(私が見た記憶があったのは、『殺意のサン・マルコ駅』(伊90年)だった。これにはアーシアは出ていない) 何やら、ミシェル・ピコリの老人と旅をするロードムービーとのことである。
『流れ者』(原題の意味は「悪党」)は、『男と女』や『白い恋人たち』といった映画のあと、ルルーシュが発表した、一種の犯罪映画である。とはいえ、あのルルーシュが撮っているのだから、それらしくない犯罪映画である。どれも素晴らしいジョゼ・ジョヴァンニの本格的なギャング映画とは比べ物にならないし、職人気質のアンリ・ヴェルヌイユの娯楽作とも異なるものである。何せ、いつものように、フランシス・レイの甘い音楽である。拳銃ドンパチの映画でないことは間違いない。
さて、映画のほうの話をしよう。冒頭、クレジットに入る前に、クラウス・キンスキーが登場して、台詞のない、わけのわからない場面が展開されるのだが、これは獄中のサド侯爵という設定らしく、彼が悪夢に苦悶しつつ、この話を書いているという描写らしい。その後、キンスキー演じるサド侯爵は何度か現れ、最後を締めくくるのだが、率直に言って、この部分は無いほうが、わかりやすくて良いと思う...(文芸映画だぞ、とでも、格調を高めるつもりなのだろうか?)
演出は、それほど切れは感じられないがしっかりしており、見るからに悪女なヒロインの脱ぎっぷりの良さは見どころだし、脱出劇は結構スリルがある。十分及第点は取れている。ジェス・フランコ監督だからクズ映画かと思いきや、決して侮れない。200本弱も作っていれば、玉石混合、出来の良いものも悪いものもあるだろう。この映画は出来の良いほうの一本ということか。